『ココロ彩る恋』を貴方と……
芸術家という職業だけでも普通とは違うし、どこかハイセンスにも聞こえる。
彼ができない家事は私がすればいいし、芸術家の夫を支える妻の立場にも憧れる。


「でもね〜〜」


芸術家というのは、やはりどこか非凡と言うか変。
性格とかそういうのはまだ不明な点が多いけど、生活習慣自体が普通じゃない。

朝起きるという感覚はまず無いらしい。
起床は必ず昼前だし、起きてもすぐに食事というのはナシ。

ボォ〜〜としたまま陽だまりで日光浴するネコのように縁側に置いてある藤椅子に座る。
ぼんやりと寝ぼけた眼差しで、庭の景色を見つめている。

それから徐ろに動き出して新聞を読みだす。
1枚1枚を丁寧に読み耽って、それが終わるのは午後2時前くらい。


それからようやく私の存在を探し始める。
私は大抵どこかの部屋を掃除しているから、順にドアを開けていけば簡単に見つかるんだけど。



「あ……いた」


ほらね、こんな感じで。


「お食事になさいますか?」


ドアの前に立っている人に声をかけた。


「…はい……お願いします……」


意外と言葉遣いは丁寧な方なんだ。
覇気がないというのがピッタリな感じだけどね。


「何を食べられますか?」


この際の何を…というのは、和風か洋風か中華か…という意味合いなんだけど、兵藤さんの取り方は非凡でーー。


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