『ココロ彩る恋』を貴方と……
「はぁ…」


大きく溜め息を吐く。

流水を扱っている手は冷たいのに、首筋だけは火照るように熱い。

後ろ頭に絡んできた彼の髪の感触も思い出すと、余計なまでに胸が鳴り続ける。


『ふ…』


近寄ってきた彼の吐息を振り返るたびに胸が熱くなってしまう。
自分がどうかしてるんじゃないかと思うくらい、ときめいて仕様がない。


(私……どうしちゃったんだろう)


何となく彼のことを気になり始めてるのかもしれないと思った。
片付けもできないし、偏食的な食事をする非凡な人なのに……って。

でも、相手は全く私を眼中に入れてくれない。

私がいることで一応の緊張を抱いてはいるようだけど、態度の方はかなりアッサリとしている。

お腹が空いた時以外は存在も探してくれないし、特に話しかけてくる様子もない。



ザクザクと野菜を切りながら思う。

あの瞳の中に映り込むのは難しいな……って。

自分を認めてもらえるくらい近付いてても、彼の頭の中には入ってないような気がする。



(どうすればいい?)


目の中に映って、私を私だと認識してもらうには。


「すごく美味し物を作って出すとか?」


そんなことできる訳がない。
家事の中で料理が一番苦手なのに。


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