『ココロ彩る恋』を貴方と……
「す、すみません!」


ぎゅっとエプロンを握って謝った。


「えっ?」


兵藤さんが驚いた様に声を上げる。


「すみません。私が要らないことを言ってしまったから……」


「えっ、何を?」


「命を頂く話をしたから余計な緊張感を持たれたでしょ?すみません。そんなの気にしないで下さい!」


言わなきゃ良かった。あんな昔に聞いた話なんて。
おかげで言われたこともないお世辞を言わさせてしまったし、食べる前と同じように食後の挨拶までさせた。


「兵藤さんはこの家の主なんですから、私の言ったことなんて気にしなくてもいいんです」


口が過ぎたのは私。プロが聞いて呆れる。


「……なんだ」


気が抜けたようにホッとする声が聞こえた。
顔を上げると、まっすぐに目を向けている人がいて。


「俺は別に緊張とかしてないよ」


そう言いながら立ち上がる。


「食事する前も後も挨拶するのは当然だろう。一人暮らしが長いと忘れがちだけど、それってしなかったら失礼なことだし、言われて良かったと思うよ」


ありがとう…と、お礼まで言われた。
穏やかな人柄だと、新聞記事に載っていた通りの人だ。



(なんて人なの…)


ちっとも悪態なんて付かない。
自分の非をきちんと認めているし、それが行動にも出ている………。


(マズい。本当に)


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