『ココロ彩る恋』を貴方と……
(とにかく視界に入ろう)
一晩かけて悩んだ挙句、短絡的な思考に陥った。
相手が私を家政婦として見ているなら、その仕事を通して彼と接する機会を作ればいいだけのことだ。
手始めはあの部屋のあれ。あれを通して、彼に近づいてみようと思う。
「あの…兵藤さん」
遅めの朝ご飯という名のお昼を食べている彼に話しかける。
今日は振り出しに戻って、『黒い物にしよう』と言われた。だから、本当にイカスミでパスタを作った。
「ん?」
唇に黒いスミを付けたままの彼が顔を上げる。
「プッ…」
マズい。意外にもおかしい。
「何か変?」
兵藤さんは自分の顔が見えてないから狼狽える。
「…いえ、あの、イカスミが口に付いてて…」
それがおかしいとも言えず、必死で笑いを引っ込める。
「……実はご相談したいことがあって、和室の障子のことなんですけど…」
笑いを急に止めたから話しだすまでの間に数回呼吸を繰り返した。
落ち着きの戻った私に比例するかのように彼が食事を再開する。
「障子?」
何ですかと言いながら真っ黒いイカを口に入れる。
「紙が黄色っぽくなって日焼けが進んでいるようなんです。それで、張り替えようかと思うんですが……」
頭に浮かんだのは黄色っぽい和紙。
それを思い出したらしく、兵藤さんが切り返してきた。
一晩かけて悩んだ挙句、短絡的な思考に陥った。
相手が私を家政婦として見ているなら、その仕事を通して彼と接する機会を作ればいいだけのことだ。
手始めはあの部屋のあれ。あれを通して、彼に近づいてみようと思う。
「あの…兵藤さん」
遅めの朝ご飯という名のお昼を食べている彼に話しかける。
今日は振り出しに戻って、『黒い物にしよう』と言われた。だから、本当にイカスミでパスタを作った。
「ん?」
唇に黒いスミを付けたままの彼が顔を上げる。
「プッ…」
マズい。意外にもおかしい。
「何か変?」
兵藤さんは自分の顔が見えてないから狼狽える。
「…いえ、あの、イカスミが口に付いてて…」
それがおかしいとも言えず、必死で笑いを引っ込める。
「……実はご相談したいことがあって、和室の障子のことなんですけど…」
笑いを急に止めたから話しだすまでの間に数回呼吸を繰り返した。
落ち着きの戻った私に比例するかのように彼が食事を再開する。
「障子?」
何ですかと言いながら真っ黒いイカを口に入れる。
「紙が黄色っぽくなって日焼けが進んでいるようなんです。それで、張り替えようかと思うんですが……」
頭に浮かんだのは黄色っぽい和紙。
それを思い出したらしく、兵藤さんが切り返してきた。