『ココロ彩る恋』を貴方と……
些細な事実だけど、知ると得した気分になれる。


(私って単純だな…)


そう思いながら始める片付け。

今日もあちこちに具材を飛び散らかせてしまった。
あーあ…と呆れながらも結構楽しんでいる自分がいる。

苦手な料理だけど、さっきのように「美味しかった」と言われたら、やっぱり嬉しいもんだ。



(ふふっ…)


声に出すと変だから心の中だけで喜んでおこう。

流水で食器の汚れを落としてから食洗機に入れた。

近頃はどこのお宅へ行っても、こういう便利な物があるから助かる。


(うちには無いけど)


しがない一人暮らしのアパート生活を思うと、この家が凄くリッチなものに見えてくる。


(間違いなくリッチなんだけど)


家電製品は揃っているし、庭だって手入れをする人がいるみたいに整っている。

そもそも家政婦を雇えるということがリッチだっていう証拠。

同じ人間なのに、天と地くらいの差がある暮らし。

こんな差がある暮らしをする人が、まともに自分を意識してくれる筈がない。

家政婦として毎日通ってくるからこそ、時々仕様がなく相手をする。

それで私が気分を良くして、彼の思う通りの彩りない食事を作ればいいのだから。


(そう思うと凹むな)


思う通りって言葉はある意味虚しい。そこには心が通わない気がする。


(私は兵藤さんと心を通わせてみたいんだけど……)


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