『ココロ彩る恋』を貴方と……
「ここ、片付けさせて下さい!」


ダメだ。この乱雑さはプロの家政婦としては許し難い。


「片付けながら紙を選別します!」


手にしていた財布をエプロンのポケットに押し込んで、紙の山が広がる部屋の床に座る。

手元に転がってる紙を拾い、兵藤さんに願った。


「輪ゴムとダンボール、いっぱい下さい!」


雇い主だろうが何だろうが、此処を片付けないと気持ちが悪い。

私が急に目の色を変えて片付け始めたせいか、兵藤さんはキョロキョロと辺りを見回しダンボール箱を探し始める。


「1箱じゃダメですよ。最低3箱は要ります!」


殺気立つように指示する私に「は、はい!」と慌てた様子で答えている。

もはや有名人だとか関係ない。

こうまで片付けられない人だとは思いもしなかった。


クルクルと紙を丸めながら綺麗な色合いに重なる紙の束を見つめる。

こんなにも多くの色合いに包まれている世界を私は初めて見た様な気がする。



(綺麗だ……本当に…)


心が潤っていくように感じた。

この色紙のように、自分が兵藤さんのことで染まっていけばいいのに…。


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