『ココロ彩る恋』を貴方と……
黙々と仕分け作業を始めてから1時間くらい経った頃、「少し休めば?」という声が聞こえてハッとした。

丸め続けていた紙の束から目を離し、聞こえた方を振り返る。


「休憩」


兵藤さんの目が私を捉え、唇がそう言って動いた。


「あ……」


我に返って辺りを見回すと、クルクルと巻かれた紙はダンボール箱に入っていた。

夢中になってたね…と、斜め向かいに座る人が笑いを噛んでいる。


「すみません。つい真剣になってしまって」


掃除を始めるといつもこうだ。
なりふり構わずしていて、終わるまでは没頭してしまう。


「お茶でも飲もうか」


兵藤さんの声に立ち上がった。


「はいっ。淹れてきます!」


「あ…いいよ」


「えっ?」


「此処にあるから」


そう言うと、体を反転して壁側を向いた。

背中越しにそっちを見ると、低い長テーブルの上にポットと湯呑みが置いてある。


「私が……」


「いいよ。俺が淹れる」


手際よく急須に茶葉を入れ始める。

給湯ボタンを押したポットの口から湯が零れ落ち、仄かな湯気が急須の頭から湧き上がる。


(うっそ。兵藤さんがお茶淹れてる…!)


部屋の中でぼぅっとするか、寝転ぶことしかできない人かと思っていたのに。



「…はい」


ミントグリーンの丸い湯呑みが差し出された。


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