『ココロ彩る恋』を貴方と……
「あ…ありがとうございます」


受け取りながらまだ信じられない。

有名な版画家でもある雇い主にお茶を淹れさせてしまった。

ドキドキとしながら茶托を引き寄せて上から眺める。
綺麗な黄緑色をしたお茶の中に、茎が一本立っている。


「茶柱……」


縁起がいいと言われるもの。


「立ってるか?良かった」


何でそんな嬉しそうに笑うんだろう。


「満仲さんがいつも頑張ってるからお礼返しになった」


そう言いながら自分のお茶を口に運ぶ。
その姿が美しく見えて、まるで一枚の絵を見ているような気がしてきた。


「い…いただきます」


早なる胸の鼓動を抑えながら指先を合わせる。

湯飲みを手に取り、ふぅっと息を吹くと茶柱が揺れて逃げていく。

そ…っと口を付けた湯飲みの温度は程良くて、熱くも冷たくも感じない。

中のお茶は渋みも少なく、あっさりとした味がしている。


「あんまりお茶っぽくないだろう。何せ白折だから」


「白折?」


「茎がメインのお茶。葉よりも香りが少なくて、でも入れようによっては甘くなる」


確かにお茶らしいとは言い難い。
色合いもどちらかと言えば黄色っぽく見えるし、香りも引き立つ方じゃない。


「でも、これで入れると茶柱の立つ可能性が高いんだ」


「えっ、もしかしてそれで…?」


わざわざ私の為に……?


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