『ココロ彩る恋』を貴方と……
「立つとラッキーな気分になれるだろう」


ニコッと微笑む人の目は、私の方に向いてはいるけど……。


「そうですね」


残念ながら私のことを思ってと言うよりかは、自分が常にそう思いながら淹れているだけみたい。


「あったまりますね」


それでも淹れてくれるとは思っていなかったから嬉しい。


(障子貼り替えるって言って良かった〜〜)


まさかこんなにあっさりと仕事部屋に入れるとは思わなかった。

兵藤さんの作品は高値で取り引きされていると新聞記事には載っていたし、製作途中のものもきっとあると思っていたから。


「あの……」


どんな風に作品を作っているのか、見せてもらう訳にはいかないだろうか。


「兵藤さんの版画って、どうやって作っているんですか?」


興味半分に聞かない方が良かった。
兵藤さんは「えっ…」と声を発し、私を見たまま黙り込んだ。


(まずっ。いけないこと聞いた?)


明らさまに困った様な目を向けられた。
それはある意味、私をきちんと見ている目だった。


「……悪いけど、作っているところは見せれないんだ」


申し訳なさそうに断り、湯飲みをテーブルに置く。


「そ…そうですよね」


何を当たり前のことを聞いてしまってるんだ。

仕事部屋に入れてくれたのは、障子に貼る紙を持って行っていいというだけのことだったのに。


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