『ココロ彩る恋』を貴方と……
「すみません。変なことを言って」


どうしようもない家政婦だな、私は。

立ち込めた嫌な雰囲気をどうにかしたくて、ゴクゴクとお茶を飲みきって湯飲みを置いた。


「ご馳走さまでした」


手を合わせると兵藤さんの顔は少しだけ緩んで。


「いやいや」


そう言いながら茶托ごと湯飲みを引き取る。


「後で洗っておきます」


それが仕事だから言ったんだけど。


「いいよ、この部屋のことは自分でやる」


何と?

自分でやるとか言った?


「で、でも…」


「満仲さんは紙を片付けるんだろう?」


終わらないよ…と紙の山を指差され、仕様がないように息を吐く。


「それじゃ甘えます」


すみませんと謝ってから紙の整理を再開した。

私がクルクルと紙を巻き始める横で、兵藤さんはじっとそれを見ている。



「……面白いなぁ」


「えっ?」


巻いていた紙から視線を外してみると、私の手元を見ている兵藤さんの姿に気づいた。


「延々と同じ動きが繰り返されるのは面白いね。満仲さんの指が細かく動いて紙に絡んでいくのが楽しい」


子供みたいな目を向けられても嬉しくない。


「そうですか?」


楽しくないよ。そんなに見つめられても。


「君の指が独特な動きでね、小指が常に伸びてて親指と人差し指と中指だけが動いてる。手のひら全部を使えばいいのに、まるでそれがクセみたいな感じだ」


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