『ココロ彩る恋』を貴方と……
「そうですか。良かった」


今日は食べずに残されるという心配は無さそうだ。

カチャカチャと皿にぶつかるスプーンの音を聞いていた。

その音が賑やかな時は、兵藤さんがお腹を空かせているんだという証拠。


(……イカスミのパスタでは消化が良すぎたのかな…)


何だか忙しく食べている様に思った。
ゆっくりと食事をすることが多い兵藤さんが、こんなにも忙しく口に運んでいるのは珍しい。


「…このご飯って、お替わりとかある?」


ぼぅっと眺めているうちに平らげている。


「ありますよ」


お替わり入れてきましょう…と言い、白い器を預かる。


「大盛りで」


「はい。畏まりました」


リベンジの成功を感じて食事室を出る。

私が作業をしている間に何をしていたのかは知らないけれど、こんなにお腹が空くようなことをしていたんだろうか。


(何をしていたの?)


不可解なことが多い兵藤さんの生活。
それを考えながらご飯を盛り、食事室へと戻ったら。


「あ…満仲さん」


ドアを開けた途端に名前を呼ばれてしまった。
驚いて前を向くと、真っ直ぐな目がこっちを見ている。


「…はい」


一瞬息を呑んで返事をする。


「和室の障子紙、剥がしておいたから」


「えっ…」


「いつ貼り替えてもいいよ」


言い終わると、すぐに食事の方へと目を落とす。


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