『ココロ彩る恋』を貴方と……
「おかげでカップの焼きそば以外にもおかず作れたし……って、どんだけ情けない食事してるんだ私は……」


ははは…と肩を落として笑う。

家事が万能なはずの家政婦の食事が、カップ麺主流というのも頂けないギャップだ。


「だって、お金は大切だもんね」


病気をしていない今に貯めておかないと、働けなくなったら生きていけなくなる。

「どんなことがあっても生き抜いていくよ」と、亡くなった家族に約束したことが嘘になっていくーー。


「………っ」


約束を交わした日のことを思い出して、つい涙が溢れそうになった。



「満仲さん…」


背後から遠慮がちに名前を呼ばれて振り向く。

振り向いたと同時に潤んでいた目から涙が一つだけ落っこちた。


「あ……兵藤さん」


目を開いて、しっかりと顔を見ている人と対峙する。


「おはようございます」


この挨拶でまだいける時間帯だと思う。

涙を引っ込めた私がそう言うと、彼はぱちっと瞬きをした。


「おはよう」


その言葉が凄く新鮮そうに感じた。

それは家族と何度も交わしてきた言葉だったーーー



「満仲さん…?」


今朝はどうかしていたんだと思う。

こんな単純な言葉で、涙が止まらなくなるなんて……。


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