『ココロ彩る恋』を貴方と……
「も……いいですか?」


美男美女の眼差しを受け続けるのは辛い。


「あ、そうね。ごめんなさい。お仕事の邪魔して」


行きましょう……と河井さんは兵藤さんの袖を引っ張った。仲良さそうに歩いていく後ろ姿を振り返り、胸がつぅんと痛くなる。



(エンジェルか……)


そう言えば最初に間違ってキスされた時もそう言われたっけ。

あの時は兵藤さんが寝ボケていたから、そんなふうに見えたんだろう…と思っていたけど。


「まさか、素の状態でも同じこと言われるなんてな〜〜」


童顔で年よりも若く見られてしまうのは前からだった。

おかげで27歳になった今も森元所長さん夫婦から「老けなくていい」と言われる始末。


「こんな幼い感じだから目も向けられないのかな」


それで泣いてたから慰めてもらえたってこと?

あの時は誰かの代わりとしてしか思えなかったけど、ひょっとして子供が泣いてるようにも見えたんだろうか。


(だとしたら情けないかも……)


大人としても見てもらえてないとなると悲しいものがある。

ショゲながら和室の畳を拭きあげ、廊下へと出てみた。


「…あら、終わったの?」


河井さんが帰るところだったらしく、仕事部屋の方から歩いてくるのが見える。


「はい。お帰りですか?」

「ええ。進捗状況も確認できたし」


にっこりと微笑む彼女を玄関先まで見送った。


< 83 / 260 >

この作品をシェア

pagetop