『ココロ彩る恋』を貴方と……
「今日は昂さんの家がどこも綺麗で気持ち良かったわ。彼も仕事がし易いようだし、これからもお願いしますね」
やっぱり家政婦協会に登録して良かった…と囁く声を耳にした。
「…河井さんが協会に申し込まれたんですか?」
驚いて聞くと、「ええ、そうよ」と返事があった。
「だって昂さんは一切掃除なんてしないもの。いつ来ても家の中は汚れているし、居住まいも整頓できない版画家だと噂されても困るでしょう?
…まぁ、まだ家族を亡くされて間も無いし、最初の頃は仕様がないと私も諦めていたんだけど……」
「…ご家族が亡くなられたんですか?」
「ええ、半年ほど前に事故でね」
それじゃ…と深くは話さずに帰ろうとしだす。
「あ…お気をつけて」
踵を返してドアを開ける人の背中に向いて言った。
「昂さんをよろしく」
少しだけ振り向いた彼女は、そう言ってドアを閉めた。
私の知らなかった兵藤さんの過去を明かして、去って行った女性。
今言ったことは事実なんだろうか。兵藤さんも家族を亡くしている……?
(誰なんだろう……)
不意にこの間抱きしめられた時の記憶が蘇った。
あの時の彼が抱いたのは、もしかしたらその家族なのかもしれない。
(誰……?)
また一つ謎が増えた。
ハイレベルな芸術家は、一体幾つ謎を持ち合わせているんだろうか。
やっぱり家政婦協会に登録して良かった…と囁く声を耳にした。
「…河井さんが協会に申し込まれたんですか?」
驚いて聞くと、「ええ、そうよ」と返事があった。
「だって昂さんは一切掃除なんてしないもの。いつ来ても家の中は汚れているし、居住まいも整頓できない版画家だと噂されても困るでしょう?
…まぁ、まだ家族を亡くされて間も無いし、最初の頃は仕様がないと私も諦めていたんだけど……」
「…ご家族が亡くなられたんですか?」
「ええ、半年ほど前に事故でね」
それじゃ…と深くは話さずに帰ろうとしだす。
「あ…お気をつけて」
踵を返してドアを開ける人の背中に向いて言った。
「昂さんをよろしく」
少しだけ振り向いた彼女は、そう言ってドアを閉めた。
私の知らなかった兵藤さんの過去を明かして、去って行った女性。
今言ったことは事実なんだろうか。兵藤さんも家族を亡くしている……?
(誰なんだろう……)
不意にこの間抱きしめられた時の記憶が蘇った。
あの時の彼が抱いたのは、もしかしたらその家族なのかもしれない。
(誰……?)
また一つ謎が増えた。
ハイレベルな芸術家は、一体幾つ謎を持ち合わせているんだろうか。