『ココロ彩る恋』を貴方と……
一番マズい時に来てしまった。今更何でもないですと言って逃げ出すのも気まずいし、それなら何の為に此処へ来たのかがわからなくなる。


どうせフられてしまうのだから今でもいい。こてんぱんに傷付いて、嫌われた方がすぐに忘れられる。


「あの…お話があって……」


後にも先にも誰かに告白しようと決めたのは初めてだった。

当然のことながら戸惑い、うまい具合に声も言葉も出てこない。


「あの……私……」


たった一言、貴方のことが好きなんです…と言えばいいだけなのに………



「お……お買い物に行こうかと思うんですけど」


大事な言葉は言えず、全く別のことを言ってしまった。


「今日の夕食は何色が食べたいかなと思って」


食材はどの色も切らしてはいない。

いつでもリクエストされていいように、ストックはちゃんとしてある。


(紫音の意気地無し!)


心の中で自分の不甲斐なさを罵った。
兵藤さんは呆れた表情を見せ、振り向いたままの態勢で聞いた。


「それ、今でないとダメ?」


明らかに迷惑そうな顔つき。眉間に縦じわが寄り、唇が下がりだしている。


(…ああ、もう、告白する前から不機嫌にさせてどうするの)


タイミングが悪すぎたと反省する。
引っ込みがつかなくなり、だらだら…と冷や汗が滲んだ。


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