『ココロ彩る恋』を貴方と……
トントン…とノックをして食事室に入ると、兵藤さんは椅子に座ってぼぅっとしている。

私はいつできますとも言わないのに、大抵は早目に来て待っている。


「お待たせしました」


トレイをテーブルに置いて料理を並べていく。

シチュー皿は紺色にしてみた。サラダボールはパイン材の木の器で、取り分け用の小皿にはフルーツの柄が散っている。


(これで皿までが真っ白だったら味気なくてつまらない)


サラダを取り分けながら、ちらっと兵藤さんの様子を窺った。

好きですと言った私に対して、意識しているところはまるで見られない。


(…この人って変)


変なのは最初からだとわかっている。出しても片付けることが出来ないし、やろうともしない性格。

相変わらず起きてくるのは昼近くだし、起きてきても暫く籐椅子の上でぼんやりを宙を眺めている。

その時はどんなに視界に入っても映ってないような目をしている。

ぼぅっと遠くを見つめて、物思いに耽っている。


(作品を掘っている時の顔ってそんな感じなのかな……)


気づけばジィ〜と睨んでいたのかもしれない。

兵藤さんの口から「こほん!」と咳払いが聞こえ、ハッと我に戻った。


「…サラダもどうぞ。シチューのお替わり持って来ましょうか?」


サラダの皿を出しながら聞いた。


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