すきなのに!!
輝は目をつぶって顔をそらした。





「き、昨日は…言い過ぎ、た…」




ぶっきらぼうに言ったわりには大きな声だったから皆の視線が集まる。



…ていうか輝が謝ったよね?あの輝が!



あたしは思わず変な格好で後ろに下がった。




「ちょ、どうしたの…」

「…は?」

「急に謝るからおかしいなって」




あたしが首を傾げると輝はぷいっとそっぽを向いて腕を組んだ。




「べ、別に…なんでもねーよ!よく考えたらお前がいなくなったらいちごみるく食えなくなるし?!理陽と夏樹もうるさいだろうし?!ちょっとな、ちょーっとだけ俺も悪かったなーなんてちょっと思ったから、だから…」


「う、ん」



「とにかくだな…ひ、1人で突っ走んな!わかったか!」


「…は?……ん?」


「~~っ!!鈍感バカ女!」


「あ?……え、どこ行くの」





輝は顔を真っ赤にして部屋からぷりぷりしながら出て行った。なんなのあの子。怒ってんのか照れてんのかわかんないし。



てかそもそも何に怒って照れるの?




輝が出て行った扉をただ呆然と見ていたらさっきまで透と遊んでいたはずの朋稀があたしの肩をぽんぽんと叩いた。




「悪りーな、しおりん」




朋稀はあたしと同じように扉を見て優しく笑っている。あなたもそのあだ名であたしのこと呼ぶんですね。


あたしは頭1個分以上背が高い朋稀を見上げた。



朋稀はまだ笑ってる。


優しい笑顔で、笑ってる。





「輝、悩んでた。お前にいろいろ言ったあと」


「……」




何も言わないあたしを気にすることなく、心地いい声色で話を続ける。





「アイツ頑固だからなー。俺らに臆することなく突っかかってくるお前の登場に動揺しまくりだったんじゃねえの?ま、俺もびびったけどな」




透に殴りかかる女がいるなんて思いもしなかった。


朋稀は言わなかったけど、たぶんそういうことだと思う。




朋稀はあたしの肩に腕を回した。なんだか今は嫌じゃないその腕をあたしはただただ見つめていた。





「…いいなって思ったの」





あたしの言葉に皆が動きを止める。




「……大事に思ってくれる人と信頼できる人が、いっぱいいて…いいなぁ、って思った」


< 101 / 165 >

この作品をシェア

pagetop