すきなのに!!
あたしは手をぎゅって握ったり、開いたりして情けなく笑う。



「万里くんにあたしがひどいこと言ったから輝が怒ったの、わかってる」




みんながそうやって甘やかすから万里くんはどんどん自分の殻に閉じこもるんだよ。


あたしはそう言った。




「正直、今でもそう思うけどね。でも…」





あたしは前を見据えて笑った。


…ああ、なんでちゃんと笑えるの?



おかしいよ、あたし。




「あたしは人に甘えられないから羨ましかったのかもね」


「え?」




あたしの言葉を聞いて万里くんが不安そうな顔をした。やだな、そんな顔しないでよ。


あたしはそんな顔してほしくて笑ってるんじゃないんだから。


あたしはにぃっと口角をさらに上げた。



「なーんてね。とにかくごめんね万里くん。あたしひどいこと言っちゃった」



笑うあたしを見て万里くんは一瞬顔色が暗くなったけど、すぐ元に戻って首を横に振った。




「いや、いいよ。アンタが言ってたこともあながち間違いじゃないし…俺は気にしてないから」




あたしがまた笑うと万里くんは唇を噛んだ。


…あれ、おっかしいな。

あたしが笑えば皆笑うはずなのに。



あたしが笑って頬を指でぽりぽりと掻くと、見ていた皆がなんだか苦しそうな顔をする。


いやだよ。




そんな顔、しないで。






< 102 / 165 >

この作品をシェア

pagetop