すきなのに!!
ーーーーーー…




「遅おおおい!!こんな時間までどこほっつき歩いてたんだよ!あぁん?!」


「…ひぃっ」




家まで理陽がついてきてくれたはいいけど、今高3のお兄ちゃん、駿也くん(通称・駿くん)にものすごい形相で怒られてるんだけど。

いや、あたしも悪い。連絡しなかったあたしが1番悪いさ、はい。




だけど駿くん。


キミが左手に持っているものは何ですか?




顔を青くさせたあたしを見兼ねた理陽がにこにこと詐欺のような笑みを浮かべてあたしの肩に手を置いた。





「駿也くんそんなに怒んないでよー。ほら見て可愛い妹ちゃんがこーんなに怯えてるよ?いいの?嫌われちゃっても」



ちょ、理陽くんやめなさいよ。
曲がりなりにも先輩でしょーが。



今度は顔が白くなってきたあたしを見て駿くんがあたしの肩を揺さぶる。



「だ、大丈夫か栞!誰がこんなひどいことを…栞の顔、まるで病人じゃねえかよ!俺がコレでぶっ叩いてやるからな!」


「アンタのせいだよ」





アンタが持ってるその巨大なハリセンのせいじゃボケ。


おっと、お口が悪かったわね、おほほほ。




理陽は普段とは違うまるで王子様のようなスマイルで駿くんを宥める。


キミはその笑顔を武器にできる仕事に就くべきだと思うよ。役者とか。あ、個人的に雇われる役者っていうの?彼氏のふりするヤツみたいな?


でも理陽が宥めれば宥めるほど駿くんの機嫌が下がってくんだけど。右肩下がりでっせ。


あたしも謝るか…。

こういうことは正直に言うべきだよね。



「ごめんね駿くん…ちょっと、その…まぁ、拉致られたというかなんというかで…」

「ら、拉致られたああ?!誰に?!どこの誰に?」



わあわあ、鼻息が荒い、そして近い。




あたしはさりげなーく駿くんの肩を押して遠ざけつつ理陽の真似してスマイルを浮かべてみた。

てかそもそもあたしはいつもこんな感じの笑顔じゃね?と今更気づいたけど、まぁいいや。


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