すきなのに!!
「な、南栄の人に…」

「南栄って…おいおいおい!大丈夫なのかよ本当に!」



ぺちぺちとあたしの頬を叩く駿くんの行動が謎すぎて反応に困るんだけども。


困った顔をして理陽に助けを求めると、理陽があたしの腕を掴んで再び詐欺スマイル。



そこへ、アイスを咥えながらやってきた人物が1人。


ちょっと、そのアイスあたしのなんですけど!あたしのぶどう味のアイスなんですけど!!



あたしの心の叫びに気付かずにその人物はお風呂上がりのラフな格好で玄関までやってきた。



「あ、栞おかえりー」

「ただいま晴くん。遅くなってごめんね」

「連絡くらいしろよな」



「ごめん」と言って俯くと晴くんはあたしの頭をぽんぽんと撫でた。


はー落ち着くー。



あたしのもう1人のお兄ちゃん、晴登(はると)くんは20歳の現役大学生。

いつもバイトで帰りが遅い晴くんより遅いとは…あたしやばいぞ。



でもまぁ、怒ってるのは駿くんだけ…なのかな?晴くんはあたしのアイス食べてご機嫌そうだし。



あたしのお父さんは海外に単身赴任中。
家には大抵クリスマスからお正月あたりまでしかいない。


これは昔からだから、別に気にしてない。あ、そんなこと言ったらお父さんが泣くよね。…まぁいいや。


とにかく、2人のお兄ちゃんはあたしにとってお父さんみたいなものなんだ。


ーーでもあと1人。





あたしは勇気を振り絞って晴くんに尋ねた。




「ねぇ、晴く…」


「栞ちゃん?!」




ドタバタと階段を駆け降りてくる音がして、若い女の人の声が聞こえた。


起きてたんだ、あの人。



あたしは今にも泣きそうな目をしたあの人をただ見つめた。



< 105 / 165 >

この作品をシェア

pagetop