すきなのに!!
…忘れよう。



今度は理陽に叩かれないように素早く手を伸ばしてクッキーを取った。ふはは!我ながらお見事!!



チョコチップか!おいしいー!
輝が持って来たのかな?


クッキーを頬張りながら輝を見やると、輝はソファーの背もたれに肘を置いて頬杖をついていた。



くそ。コイツも顔だけマンだったわ。


顔は可愛いのに性格が…ねえ?


あたしがこの顔だったら絶対清楚で女子力高い究極の可愛い女の子を目指すのに…。



輝の薄茶色の瞳があたしを捉える。



あ、あれか!クッキー食べたいのね!
やーん黙ってないでなんとか言えばいいのにひーくんってば!


ていうか今日のあたし、いまだかつてないくらい気が利いてるよね!!自分でも輝の思ってることが手に取るようにわかっちゃって驚きを隠し切れませんからね!!





あたしは再び理陽の目を盗んでクッキーを何個か取って輝の目の前にかざした。



なのに輝はピクリともせずただただあたしを見ている。え、ちょ、怖いよ今日の輝。あ、いやいつも恐ろしい目をしてるけど、無言のほうが怖い。



輝はキョロキョロと挙動不審に動くあたしを見て何を思ったのか、いきなりあたしの頭をグイッと掴んだ。


あたしの頭の中には昨日理陽に曲げられない方向に曲げられたことが一気にフラッシュバックしてパニックになっていた。



「ちょちょちょ!!無言はやめてよ!マジで痛いんだけど!!」


「……」


「無視かよ!」




なんなのこの女顔野郎。暴れん坊キャラから無口キャラに方向転換か!!今更遅いぞ!!



…うおおお!!な、なんだか燃えてきたぞおお!!ギラギラ炎を揺らしているあたしの目が見えるか輝くんよ!!




あたしは輝の力が少しだけ弱まった一瞬で体を屈めてソファーから立ち上がった。おーっほほほ!!ざまあみろ!!



あたしがほくそ笑んで朋稀と理陽の座るソファーの後ろにいる夏樹くんの方に駆け出そうとした途端、あたしの腕は誰かによって掴まれてそのまま誰かの膝に鼻からダイブした。



あまりに強い力であたしは抵抗できずに倒れ込んだから、鼻が痛い!



鼻を押さえて上を見上げるとそこにはいつもとは違う真剣な顔をした朋稀がいた。


< 110 / 165 >

この作品をシェア

pagetop