すきなのに!!
ふと隣を見ると万里くんは暇そうにあくびをして、シャーペンをくるくる回していてあたしは度肝を抜かれた。



万里くんって実は凄いヤツ?!


万里くんのペン回しはノーマルな感じじゃなくてだね、なんか…うん、えっと、ダイナマイト??あ!違うわ!ダイナミックだわ!!



あんな余裕ぶっこいた顔で高度な技を手元を見ずにやるなんて…!!!






あたしは万里くんの腕を掴んできらきらした目で見上げた。




「万里くんって、すごいね!!」



「…は?」





はい、いただきましたー。万里くんお得意の「は?」+嫌そうな顔ー。




でももう今更いちいち気にしてなんかいられません!だって今のあたしはペン回しをし続ける万里くんの手元に釘付けなのだから!!





「わあ…すっごーい!」


「近い近い近い近い近い近い」





なんだよちょっと近寄っただけじゃないか。ちぇー…。


あたしにはできないな…あんなペン回し。


自分で言うのもあれだけど、あたしは手先が壊滅的に不器用なんだよね。



昔からどうも細かい作業は向いてなくて、そういうのをやった後はなんだか気持ち悪くなる。


小学校のときは家庭科で宿題が出たら、お兄ちゃんや理陽があたしの代わりにやってくれたりした。


しかもあの人たち、「栞にやらせると大惨事になる」とか言って自分から進んであたしの宿題やってくれたからちょっとおかしい。


お兄ちゃんは2人とも器用なのになんであたしだけ…。



理陽なんて器用すぎてビビるよ。あれはおかしいね。人間じゃないね。




調理実習はあたしの人生最大の山場だと思ってるから。





万里くんの真似をしてやってみるけどやっぱり上手くいかない。はあ…。





「…ということで主人公のカナはコウジに告白しようとついに決心したわけです。はい、ここから重要ですよー」





なんか知らないけど一気に話進んでるじゃん!さっきまで主人公のカナちゃんはコウジに喋りかけることすらできてなかったのに、一体なぜ…。





「恋って…すごいよね」


「わっ!いきなりどうしたの茉央ちゃん。そんな乙女みたいな顔して」





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