すきなのに!!
茉央ちゃんはスマホを大事そうに握りしめながら目を閉じてあたしの方を向いた。


な、なんか変なスイッチ入ったね…。




茉央ちゃんはこめかみの辺りを押さえて「はぁ…」とため息をつく。



万里くんまで茉央ちゃんに注目をしてペン回ししていた動きを止めた。






「恋…しちゃったかも」







いきなりの告白にびっくりしてあたしは持っていたシャーペンを床に落とした。



慌てて拾って、まるで感情移入しまくってる女優のように振る舞う茉央ちゃんに視線を戻した。





「恋しちゃったって、…どういうこと?」






あたしの言葉に待ってましたと言わんばかりに興奮している様子の茉央ちゃんはあたしの両手を物凄い力で掴んだ。



力なさそうな顔して実はめっちゃ怪力だなんて凛とモロ一緒じゃないか!!





「あたしこの間、道で転けてね、」


「ドジだね」


「うるさい最後まで聞いて」





茶々を入れたらピシャリと跳ね返された。


渋々黙って乙女モード全開の茉央ちゃんの話を聞く。



茉央ちゃんはピンクに染めた頬に手を当てて、ほう…とため息を漏らす。





「道行く人はみんなあたしのこと見て見ぬ振りしたんだけど、その人は『大丈夫か?』ってあたしを立ち上がらせてくれてね!!」


「おお、優しいね。ジェントルマンだね」


「でしょでしょ?!し・か・も!!めっちゃかっこよかったの!!金髪で、おしゃれなアクセいっぱいつけてて、ちょっと感じ悪そうなんだけど、優しくってね!あたしのどストライクだったわけ!それに南栄の制服来てたから近所じゃん?!」





金髪で、アクセいっぱいつけて、感じ悪そうだけど実は優しくて、南栄の生徒…。あれ、なんか引っかかる…。




…まあ人違いだよね。そんな人、世の中に多勢いるわ。






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