すきなのに!!
「颯くん、どこ行くの?…あ、茉央ちゃんに何も言わずに抜けて来ちゃった…」
どうしよ。茉央ちゃん怒ってるかな…。
あたしはマッハでスマホをリュックから取り出して茉央ちゃんに電話をかけた。
怒鳴られるかな…。
『もしもしー?」
「も、もしもし茉央ちゃん。ごめんね。恭ちゃん調子悪いみたいで、先帰るね」
ちょっとビクビクしつつそう言って、ずり落ちた恭ちゃんを担ぎ直した。
電話の向こうではがやがやと騒ぐ声が聞こえる。
あー緊張する。
どんな恐ろしい言葉が出てくるんだろう。
『あ、そうなのー?別にいいよ。体調悪いなら仕方ないし。それにもう恭汰くんはいいかなって思ってたところだし』
「そっか、ありがと…って、え?!諦めちゃうの?!」
『うん、なんだか恭汰くん好きな子いるっぽいしー?』
「え?!そうなの?!茉央ちゃん本人からそんなことまで聞いてたなんて…すごい執念」
『いやいや、あたし勘鋭いからね?ていうか普通気付くけどね』
「ん?」
『なんでもないですぅー。じゃあ、気をつけて帰りなよ』
「はーい。じゃあねー」
茉央ちゃんて勘がいいんだね、ちょっと意外。おっと、こんなこと言ってたら茉央ちゃんの地獄耳で後から大変な目に会うかもしんないから黙っておこう。
「茉央ちゃん怒ってなかったよ、颯くん」
「茉央ちゃんはサバサバしてるからなー」
「ねえ、颯くん、さっきから言おうと思ってたんだけどさ、なんかあたしの方だけやたら重いんだよね。キミ力抜いてるでしょ」
「しおりんには俺がそんなことをするようなヤツに見えるんですか」
「うん」
「うわ、ひでー」
酷いとも何とも思ってなさそうな声で言うと、颯くんはケラケラ笑った。
でもキミがきちんと恭ちゃんを持ってないのはわかってるぞ。
いつの間にか恭ちゃん寝てるし。