すきなのに!!
「あなた、名前は?」
「へ?あ、はい。村山 栞です」
「栞ちゃんね!よし、覚えた!!」
そのままぺらぺらと何かを喋ってる美人…弥生さんの言葉は残念ながら放心状態のあたしの耳には一切入ってきませんごめんなさい。
弥生さんに引っ張られて広いロビーを通って階段を上がっていく。後ろからケラケラ笑ってる颯くんと寝てる恭ちゃんがついてくる。
あるドアの前まで来ると弥生さんはあたしの手を離して、首と拳をポキポキポキポキ…。え、何する気朋稀の姉ちゃん。
「ここのドア、立て付け悪くってさー。毎回毎回困っちゃうのよねぇ」
笑顔と言動が合ってない…。
まさかね、まさか似てるのは恐ろしく顔が整ってるってだけで、性格も好みもきっと美人な弥生さんと顔だけ最高の朋稀はそう対して似て……、
「とおりゃあ!!」
##FS.L##似てますね。##FE##
ドアを足で蹴飛ばして開けるなんて、そっくりですね、ふふふ。
はい、もう何も驚きませんよあたしは。
あたしは自分でも気持ち悪いくらい笑顔でその部屋に弥生さんの後に続いて足を踏み入れた。
な、なんだここは…
シャンデリアにでっかい冷蔵庫、テーブル、キッチン、薄型テレビ。わかったぞ。溜まり場にある謎な物たちは全部朋稀の家のヤツだな。
そして部屋の中は、あるはずのないものの匂いで充満していた。