すきなのに!!
や、やばい。開いた口が塞がらない。



弥生さんは朋稀の頭を乱暴に掴んで、あたしに「また連絡するね」と微笑んだ。



うわぁ…ギリギリって聞こえたんだけど、朋稀は大丈夫なのかな…。



あたしが引き攣った笑顔で手を振ると、弥生さんは笑顔で部屋から朋稀と共に出て行った。



そのあと、この家のどこからか奇妙な叫び声が聞こえたのは言うまでもない。








「まっず。ビールまっず」


「おいおい、ビール飲んでるヤツの前で言っちゃいけねぇだろーが」


「颯くんよくこんなまずいの飲めるね」


「村山さーん。人の話聞きましょうね〜。しっかし、しおりん酒強いな。早く酔っ払えよ、そして面白いモン見せろよ〜」






さっきから颯くんに無理やり飲まされ続けてるけど全然なんともない。あたしはお酒に強いみたい。



近くにあったカクテルを手に取り、それを一気に煽った。あーお茶飲みたーい。颯くんがお酒以外のもの捨てやがったからお酒と水しかないよ。



あたしがため息をつくと、両肩に同時に何かが乗っかって、あたしはビクっと軽く飛び上がった。やば、5cmくらい飛んだぞあたし。




「おーい、しおちゃん」


「…なんだね透くん」


「別に、なんもないねんけどな」


「重いから退いてよ。死ぬ。右肩死ぬ」


「いや」


「…いや、じゃなくて」






無理やり透の横腹を押しのけたら透はバタンキューとソファーの端っこに倒れて行った。



…よし。あと1人。




あたしの左肩に顎を乗っけて、にっこり微笑む…。





「ね、お酒ちょーらい」


「…万里くん、もうやめときなよ、ね?」




あたしが諭すように言うと万里くんはそこら辺の女の子より大きく澄んだ目を潤ませてあたしを上目遣いに見上げる。




「……うぅ」


「ば、んりさん」






万里くん、なんでこんなに可愛いの。
あ、一句できちゃったぜ。



万里くんはあたしの手を握って首をこてんと傾げた。



そして天使が降臨した。






「…おねがい、…だめ?」







ま、負けた…。


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