すきなのに!!

理陽はあたしを見て口元に手を当てて小さく笑うと、あたしの頭をぽんぽん撫でた。




「わかりやすすぎてこっちが困る」


「…はい」






理陽はあたしから手を離すと、戦場と化しているキッチンの方を見て呆れた顔でため息をつく。


あのミルクティー頭の甘党くんは血走った目で包丁を握って何かと格闘してる。





赤茶色の髪のキュートな後輩くんは生の人参にかぶりついていて、怖いんだけど、うさぎみたいでちょっと可愛い…って何を言ってんだあたしは。





あたしたちが話していた間にキッチンで何かがあったことは確実ですね。





「理陽、大変だね」




理陽に哀れみの目を向けると、理陽は苦笑いしてゆっくり立ち上がった。



そして困った顔をして茶金色の髪をくしゃりと撫でると理陽のペンダントがしゃらんと音を立てて揺れる。






「…うん、ちょっとキッチン見てくる」


「いってらっしゃーい」






うん、まだまだ‘‘これから”だもんね。






昔よりだいぶ大きくなった理陽の背中を見つめながら笑って、そんなことを思っていたのだった。








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