すきなのに!!
*・*・*・*……





「しおりんやっぱすごいね、万里ちゃん?」


「ちゃん言うな」


「いいじゃーん可愛いんだから」


「可愛いって言われても嬉しくなんかねぇんだよ」





俺が唇を尖らすと、颯は「ばーんりちゃん」と馬鹿にするようにケラケラ笑ってオーバーすぎるくらいに膝を叩いた。



いちいち動作がうざったくて仕方ない。




大体可愛いの基準ってなんなんだよ。




考えながら腕を組んで木の下の日陰にしゃがみこむ。



サッカーで盛り上がる男子と、すっかりバレーボールをやる気をなくした女子たちが目に入る。




「万里くんは可愛いと思いますよ」


「っわ!!」





突然横から聞こえてきた女子の声にびっくりして、思わず芝生の上に手を付くと、ソイツはにこにこ?にやにや?よくわからないけど、とにかく笑う。



この人はいつも笑ってる気がする。



ソイツはポニーテールにしたウェーブのかかった黒い髪の毛先をくるくるといじりながら俺の隣に躊躇することなく座る。



初めて会ったときからだけど、言ってることが本気なのか冗談なのかよくわからない女だ。





いつものように、にこにこと笑って真っ直ぐに見つめてくるその瞳は何かを隠してるような違うような…。




俺は敢えてさっき颯に言い返したときのように、「嬉しくない」と冷たくあしらったけど、この人にはどうも効き目がない。




むしろ、どんどん笑顔になっていくから、この人はかなりのMで変態なんじゃないかとさえ思えてくる。



教室でも授業中他の奴らは輝や颯の周りの人間以外は比較的おとなしいのに、この人は授業中だろうが休み時間だろうが、関係なく話かけてくる。



南栄の透を竹刀と足で吹っ飛ばしたり、颯のことも背負い投げしたりしたらしい。



俺だって南栄の奴らに絡まれたとき、どこからかやって来たこの人がいきなり目の前の男を何人もなぎ倒したときはびっくりして声が出なかったし。




よくわからないというか、不思議な女だ。





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