すきなのに!!
「俺は平野 晶(ひらの あきら)です!」
坊主の野球少年は晶くんっていうのか!「野球ファンですか」って聞いたら困った顔をされた。もう二度と変なことは聞かないと誓う。
「で、キミたちはなんて名前なの?」
甘ったるい声であたしと凛に尋ねた颯くんに思わず顔をしかめた。どっからあんな声出るんだ。
凛はビクッと肩を震わせて、一度あたしの顔を見た。…緊張してるな、この子。
「榎本 凛(えのもと りん)、です」
蚊の鳴くような声で言った凛はなんだかいつもより小さく見えた。
「そっか~よろしくね、凛ちゃん」
颯くんが屈んで凛に視線を合わせて微笑むと、凛は頬を赤く染めてこくこく頷いた。
おいおい嘘だろ。さっき外であたしが暴れようとしてたとき、何度も物凄い力であたしを止めようとしてたのに。
般若顔負けの形相であたしを睨んでたのに、なんで今はこんなしおらしくなっちゃってんだい。
…あ、もしかして、これが女子のテクニックってやつか?!
「……あたしにはムリだ」
「何言ってんだコイツ」
…なんだその目はミルクティー神崎よ。
神崎輝はあたしを指差して朋稀に首を傾げてる。