すきなのに!!
「行かないよ~。つまんないし」

「そーだそーだ」



何この人たち。これが不良ってやつ?


「行こうよー!最初が肝心じゃんか。お願いー!」

「いやだー」

「むりー」


理陽に助けを求めるように見たら、理陽は困ったように笑って立ち上がって、颯くんと輝の方を見下ろした。




その瞬間、2人の顔がどんどん青白くなっていく。


理陽が2人の肩に手を置いて、何か耳元で囁くと、2人はピシッと立ち上がって、床に放り投げてあったカバンを手にした。



「き、今日は気分いいから行こっかな~。久しぶりに女の子に会いたいし」

「だ、だな。教室の方が静かに寝れるからな」




2人の顔は青白いままだ。



…もしかして、理陽がなんかしたの、か?



あたしが怪訝な顔を理陽の背中に向けると、理陽はくるりと振り返ってにっこり微笑んだ。




「しーおり」


「な、何かしら」




ちょっと警戒して後ろに下がるけど、理陽は依然にこにこしながら近づいてくる。

後ろの輝と颯くんが「ひぃっ!」と小さく叫んだのは気のせいかな?


理陽はあたしの目の前まで来ると、あたしの頭を撫で始めた。



「がんばってね」



微笑んだ理陽の顔があまりに優しいもんだからちょっとたじろぐ。



「う、うん。理陽も教室行ってね」

「……はーい」



なんだ今の間は。さてはコイツ、行く気なかったね。苦笑いする理陽をちょっと睨んだ。



「栞、行かないの?」

「あ、行くよ。待って凛!」



あたしは慌ててドアノブを捻った。


後ろにはたくさんの厳つい顔したヤンキー。

未だに震えてる輝と颯くん。

なんかぼーっとしてる朋稀。

輝が置いてったキャンディーの山を片付けてる夏樹くんと晶くん。

にこにこと手を振る理陽。



あたしは後ろを振り返って、今日1番の笑顔を見せた。




「あたし、村山 栞!よろしくねー!」





愛想笑い60%
本気の笑顔40%


もうすぐでちゃんと笑えるかもしれない。



あたしは呆然と立ち尽くす皆を見て
再び笑った。



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