すきなのに!!
「「痛っ!!!」」



あたしと夏樹くんはどこからか登場してきた輝にカバンで殴られた。

ミルクティー色の髪を触りながら怠そうにあくびをした輝にあたしは詰め寄った。


「な、なんで理陽は殴んないの?!」

「…あーあ。疲れたわー。ささ、理陽ちゃんとっとと行くぞ。このちびっ子に付き合ってたら日が暮れちまう」



腑に落ちない…。

腕を組んで先に前を歩いていった2人の背中を見つめていると、夏樹くんが耳打ちをしてきた。



「理陽さん、あんなに爽やかな笑顔でとんでもない毒舌をぶちまけてくるんです。だから敵に回すと本当にシャレになんないんで気をつけてください」



「わかりましたか?!」と念を押されて、夏樹くんのあまりの必死っぷりに根負けして頷いた。


あたしが理陽に会ってなかった間に、理陽は変わったのか。



そう思うと、なんだか寂しくなった。





あたしが俯いていると、夏樹くんが心配そうな顔であたしを見つめていたので、慌てて笑い返した。




「なんでもないよ」





なんでもない。

大丈夫。

平気。



そんな言葉があたしの心を埋め尽くす。


夏樹くんに言った言葉のはずなのに、なぜか自分に言い聞かせているように聞こえた。

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