すきなのに!!
「ひ、かる…!」
「ちょ、は?!うわ!!」
万里くんが輝の後ろに隠れて背中にしがみついた。
輝は動揺して持っていた苺オレを落としかけている。
「おいちびっ子、デカイ声出すんじゃねーぞ。わかったか」
「は?!どうして?!」
「うるっせえ!!声のボリュームもトーンも落とせ!」
「輝の方が声大きいよ」
「あぁん?!…って今はくだらねぇ喧嘩してる場合じゃないんだった」
輝は後ろで怯える万里くんにどうどうとか言って落ち着かせようとしてるみたいだけど、万里くんがそれで落ち着く訳がない。彼は馬じゃないんだから。
「ちっ…どうすりゃいいんだよ。……おい理陽、今すぐトイレに来い。は?駄々こねてんじゃねえよ。万里がちびっ子と鉢合わせたんだよ。あ?…ちびっ子って誰?テメエの変人幼馴染だろうがアホ!」
理陽と電話越しにもめている輝。
どうやら只事ではないらしい。
そんでもって、あたしはチビで変人らしい。
別に言うほどチビじゃないよ。普通だ普通。輝とあんま身長変わんないし。
心の中で輝に対してキレていたけど、それが顔に出ていたのか、万里くんがさっきにも増してぶるぶる震え出した。
輝はケータイを耳に当てて理陽と喧嘩したままあたしたちから遠ざかって行く。
輝がなんとかするべき状況じゃないの、これ。
あたしにどうしろって言うんだ。
万里くんのことを何も知らない、
このあたしが。