すきなのに!!
もうダメだよ。
この子には何を言っても無駄だ。



げんなりして理陽を冷ややかな目で見ると、誰かが吹き出したのが聞こえた。




「あははは!」


「ば、万里?」




万里くんは口元を押さえてずっと笑い続けている。

理陽と輝はそんな万里くんを見て目を見開いている。




万里くんはまだ笑ってる。

その可愛いお顔でにこにこしてる。






「おい万里どうしたんだよ。引きこもった結果、頭までいかれちまったのか」


「ひゃはははっ!」


「万里…」



輝が万里くんの体を揺すって、理陽が心配そうな目で万里くんを見ている。


万里くんはまだ笑いを堪えきれないようで、少し深呼吸しながらあたしを見た。




「ねぇ、この子。輝の友達?」

「は?ちげーよ。何言ってんだお前」

「じゃあ理陽の?」

「んー、友達兼幼馴染…かな?」

「ふーん変な子だね」

「…かっちーん」

「かっちーんって口で言うところがおかしい」



な、なんなのこの子。

あたしは唇をわなわなと震わせて万里くんを睨んだ。



「万里くんて顔は可愛いくせに言ってることは全然可愛くない」



あたしが言ったことが気にくわなかったらしい万里くんが「は?」と言って立ち上がった。



「お?やる気か万里くん。言っとくけどあたしが本気出せばきっとこの家は全壊するぞ。それでもいいかい?ん?」



戦闘ポーズを構えつつ口角を上げて立ち上がった。

万里くんがちょっとたじろぐ。


するとさっきまで全く興味なさそうだった理陽があたしの肩を後ろに引いた。



「万里は繊細だからやめてあげて。万里はちょっと人間不信気味なんだよ」


「みんながそうやって甘やかすから万里くんはどんどん自分の殻に閉じこもるんだよ!」




あたしがそう叫ぶと輝が物凄い鋭い目をあたしに向けてきた。

輝にここまであからさまに嫌悪感を向けられたことは初めてだったから思わずゴクリと唾を飲んだ。



「お前、あんま調子乗ってんじゃねえよ」



輝の目の色が変わる。



「理陽の幼馴染だから心のどこかで甘く見てたけどな、万里にそんなこと言うならもう容赦しない」



輝があたしの胸ぐらを掴んで引き寄せた。



「女なんて信用できねぇし、お前のことを仲間だと思ったことは一度もない」



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