すきなのに!!
スキンヘッドは軽く10mくらい吹っ飛んで地面にぶっ倒れた。

万里くんが解放されて周りにいた男たちの視線があたしに集まる。


もちろん、万里くんも。



「な、なんでお前…」




万里くんはあたしの突然の登場にびっくりしたのか、声が出ていない。


あたしはスキンヘッドが落としたナイフを拾って万里くんに渡した。




「持ってて」

「は?」

「いいから!」




あたしは無理矢理万里くんの手の中にナイフをねじ込ませた。万里くんは困惑顔を浮かべた。


するとスキンヘッドと一緒に万里くんを羽交い締めにしていた男がニヤニヤしながらあたしを見てきた。




「女の子がこんなところになんでいるんだよ~。俺みたいな男に襲われちゃうよ~」


「な…っ?!」


「ちょっと赤くなってる?かっわいー」




なんだコイツ。気持ち悪い。



周りの男もあたしをやらしい目で見てくるから吐き気がする。


そしたら万里くんがあたしの肩を引いて、あたしの前に立った。



「え?ば、んりくん…庇ってくれて…」

「うるせー」



可愛い顔に似合わない言葉を前を向いたまま言った万里くん。


それを見た男たちが万里くんを冷やかし始めた。




「おっと、矢野が女庇ってるぜ」

「ひゅひゅー!」



うわ、古い冷やかし方。


スキンヘッドはよろよろと口元の血を拭いながら立ち上がり、ギロリとあたしを睨みつけた。



「っ。テメエ、このクソアマ!!」


「ひいいい!!」



あたしはうっかり万里くんの背中を突き飛ばして、自分は慌てて低く屈んで、スキンヘッドの拳をなんとか避けた。



スキンヘッドは舌打ちをするとあたしの後ろの壁に思いっきり右の拳をぶつけてあたしを壁に追い込んだ。




「や、やめよう。キミみたいなあんまパッとしない男が壁ドンをしても全くキュンてしないから」

「うるっせえな、あぁん?!!」




左の拳も壁にぶつけて顔を近づけた男を見てあたしは顔を青くした。し、舌にピアスが…。痛そう…!
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