すきなのに!!
「っ…はぁ、疲れた」

「万里くん体力ないね。引きこもってるときも運動くらいしとかなきゃダメじゃないか」

「…うっせー」




万里くんの口癖は「うるさい」ってことが判明した。


全く、最近の男子は弱っちーね。
あたしなんてまだまだ走れるよ。北海道まで行けるわ。



あたしたちが隠れてるところの前にはベンチやら大きな木やらがあるからそう簡単には見えないと思うけど…。



ていうか漢字の問題集捨てちゃった。もう、これは神様の「栞殿には勉強なんて向いてない。毎日楽しくハッピーに過ごしたまえ」っていうお告げだよ!きっと!




あたしがふふふと笑っていると万里くんが冷たい目であたしを見てきた。



「お前って毎日楽しそうだよな」

「神様にそう命じられてるのさ」

「意味わかんねえし」





あたしは陽気に鼻歌を歌いながらカバンの中をゴソゴソ漁った。



「いちごみるくはあるかな~ふんふふーん♪」

「…いちごみるく?」



万里くんが眉をひそめて首を傾げる姿が可愛すぎて思わずふにゃりと笑ってしまう。可愛い。なんでこんな可愛いんだ。



「いちごみるく、知らないの?美味しいよ」

「なんか甘ったるそうな名前」

「なーに言ってんの。甘いからこそ美味しいんだよ、いちごみるくは」




お、あったあった。あたしはカバンからいちごみるくの入った袋を取り出して、万里くんに一粒渡した。




「はい!あげる」

「……さ、さんきゅ」




万里くんは包み紙から三角のキャンディーを取って口の中に入れた。


万里くんは食べた瞬間、目を見開いてあたしのほうを見た。




「美味しいでしょー?」

「う、うん」

「でしょでしょ!この前も輝にあげたんだけ……」




…やだな。あたしってば。


今更アイツらのこと思い出したってしょうがないよね。



あたしは言いかけた言葉を引っ込めて、キャンディーを慌てて舐めた。





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