すきなのに!!
ーーーーーーー…





視界がぼやぼやしていたけど、だんだんはっきりしてきた。


あたしは真っ暗な部屋に連れて来られたみたいだ。



両手は後ろで縛られてるから手を動かせない。


……あ!




「万里くん!!」




どこ行った万里くん!


辺りをキョロキョロ見渡すと、部屋の隅っこにぐったりと倒れている万里くんを発見してあたしは急いで駆け寄った。


万里くんの前に座り込んで声をかけてみるけど、返事が帰ってこないからあたしは一気に真っ青になった。




「ばん…り、くん……」




掠れた声しか出ない。

どうしよう、万里くん。


ねぇ、どうすればいいの…。



女の子より綺麗な肌にはところどころ擦り傷があって、胸がズキンと痛んだ。




「1人は嫌だよ…」




まだ気を失っている万里くんを見つめてポツリと呟いたあたしの声はとても情けなかった。




…どうしてこんなところに連れてこられたんだ。



あ、万里くん家すっごい大きかったから、お金持ちってことだよね。だとすると、身代金目的の誘拐…?!


…いや、待て待て待てーい。

だったらあたしはいらないだろうが。




……は!!

路地裏で会ったあのスキンヘッドたちかもしれない。



…そうだよ、絶対そうだ。


だったら西華の万里くんも、透を投げ飛ばしたあたしも、ここに連れて来られた意味がわかる気がする。

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