すきなのに!!
ダメだコイツら、ミス○のドーナツの話で盛り上がっている。ちなみにねあたしはゴールデンチョコレートが好きです。


南栄の不良はどうも甘いものが好きらしい。ハーゲンダッツといい、ドーナツといい…会話の大半はスイーツ絡みなのだ。


西華の甘党ミルクティー頭(ひ◯る)はこっちの人たちのほうが話が合うんじゃないか。




「おっとすまんな。話が逸れてもうたわ。ははは」




ちょっとカチーンってなったけどがんばって耐えた。


相手は不良のへっぽこ下っ端ではない。


あたしがぶっ飛ばしたときは隙だらけだったからであって、コイツは曲がりなりにも南栄の不良の中で2番目に強いんだ。



あたしは膝の上でぎゅっと拳を握り締めていた。




透が真っ赤な髪の毛を右手で触りながら左手でトップの肩に手を置いて笑った。




「今回アンタらに来てもらったのには深ーい訳があってな」

「別に深くない。……どっちかというと浅いぞ」

「やかましいわ!遊は黙っとって」




この漫才師たちが揃うと話が進まないことがわかった。


呆れた視線を送っていると透はなぜかニコッと笑った。




「アンタに投げ飛ばされて、最初は全員ムカついとった。せやけど、いろいろ考えとったらアンタのことが頭から離れんくなってもうたんやわ」


「え、は?」




透は腕を組んで目を閉じ、思い出を振り返るようにうんうんと頷き始めた。




「ほんでいろいろ調べてくうちにアンタが西華の不良と一緒にいるのを見たヤツがおってな。アンタにぶっ飛ばされて仕返ししたろ思っとったけど、よく考えたら女に殴られたん初めてやったわ」



透はいきなりぱちっと目を開けて、スタスタこちらに近づいてきたからあたしはぎょっとして逃げようとしたけど、



「恭汰」


「…え?お、お…う」



トップに指示されるがまま恭ちゃんがあたしの後ろにやってきて逃げられないように脇の下に手を突っ込まれてそのまま羽交い締めにされてしまった。



あまりの行動の速さにあたしは動けなくて、捕まってから暴れてみたけど恭ちゃんが耳元で「ごめんな」と囁いたから、仕方なく大人しくすることにした。




話を聞いてる感じだと、殴られることはなさそうだ。一安心。


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