【完】あともう少しだけ、背伸びする。
「_____な、なせ…?」
なんでいるの…?
こんな姿見せたくないのに。
なんで、一番会いたくない相手によりによって会っちゃうの。
「宮野、なんで泣いてんだよ…?」
すぐに隠したはずなのに、七瀬には見えてたみたい。
すごい勢いでこちらに向かって来る。
「誰かにされたか?名前わかるか?名前分かるんだったら…」
「いや、違うから!最近読んだ本思い出して泣いちゃっただけだから!」
何かされた前提で、話を進める七瀬を必死に止める。
案外、冷静に思考が回ってる。
大丈夫、これならいける。
「わかりやすい嘘なんてつくなよ」
「ついてないよー?てかついてると思うならスルーしなさいよ。女の子だけの事情かもしれないでしょ?」
遮るようにフッと笑うと何も言えないみたいで、口を閉じた。
涙も止まったし、大丈夫だ。
…あんなに心配した顔の七瀬初めて見た。
もうそれだけで、十分だ。