【完】あともう少しだけ、背伸びする。
その瞬間、腕を引き寄せられた。
温かい、心地よいぬくもりに包まれる。
「嘘じゃないよな。」
「う、嘘じゃないです。」
「ここで嘘って言ったら張り倒すけどな。」
「真面目に怖いです、七瀬さん。」
ははっとふたりで笑いあう。
こんな普通の会話でも嬉しいと思える。
…きっと七瀬だからなんだろうな。
「俺たちお互いバレないように必死だったんだな。」
「だね、不器用すぎるよほんと。」
ぬくもりが続く時間はそう長くはなく、腕をほどかれ、少し寂しくなる。
「なあ、さっき聞けなかったから質問してもいい?」
「…なに?」
「俺と付き合ってくれますか?」
「…!こんな私ですが、よ、よろしくお願いします…!」