【完】あともう少しだけ、背伸びする。
「あんたどこから情報拾ってくるのよ。それと本当だとしても広めちゃだめだよ。」
「わーっかてるよ、もう美波だから言ったのにー!」
『…羨ましいよ、本当に。』
今まで何度こんなことを思っただろう。
華恋ちゃんみたいに可愛かったら。
七瀬と幼馴染だったら。
でもどれだけこんなことを思ったってこの関係は変わらなくて。
結局、一方通行の矢印の向きはそのままなんだ。
「健人、そこどけ。そこは俺の席だ」
「げっ、帰ってきたのかよ。いいですね、イケメンは!」
「本当だよー、七瀬にあんな可愛い子はもったいない!」
「なんだよふたりして」
「別にぃ~?あー腹立つ!」
帰ってきた七瀬にいつも通り嫌味を言い、健人とね~って少し首をかしげ同感すると、不満そうにこちらを見る。
そんな顔でも、どきっとしてしまう。
胸が高鳴っているどきっ、と自分の気持ちがバレていないかなというどきっ。
ふたつのどきっが私の思考を奪う。