ラティアの月光宝花
*****
恐ろしい声でヨルマは鳴いた。
セシーリアに迫り来る者は全てヨルマの敵であった。
鋭い爪で敵の身体を裂き、喉に食らいついて骨を砕くと、ヨルマはセシーリアを守るように寄り添いながら走る。
「ヨルマ、ありがとう」
ヨルマがセシーリアを見上げる。
「こっちよ、ヨルマ」
二人は一心に走った。
***
「お母様!お母様!」
屋敷の中で折り重なるように倒れている護衛兵の変わり果てた姿に、セシーリアの胸が痛いくらい脈打ちその身体は震えた。
アイリス・ラティアの別宅は、既に敵の手に落ちていたのだ。
「お母様!お母様!」
刃向かった為に殺された侍女達の中に、女王アイリスの姿は見えない。
床に倒れた者はピクリとも動かず、魂が宿っていないのが見てとれた。
そんな中、今にも途切れそうな声がした。
「セシーリア様……」
「っ!!」
倒れた家具の下からわずかに見えた白い手に、セシーリアが夢中で駆け寄る。
アイリス付きの女中長ミカであった。
「ミカ!しっかりするのよ。今助けるわ!」
言いながらセシーリアがミカの上の家具に手をかけると、彼女は僅かに首を振った。
「私はもうダメです。脇を刺されていて……もう長くありません」
恐ろしい声でヨルマは鳴いた。
セシーリアに迫り来る者は全てヨルマの敵であった。
鋭い爪で敵の身体を裂き、喉に食らいついて骨を砕くと、ヨルマはセシーリアを守るように寄り添いながら走る。
「ヨルマ、ありがとう」
ヨルマがセシーリアを見上げる。
「こっちよ、ヨルマ」
二人は一心に走った。
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「お母様!お母様!」
屋敷の中で折り重なるように倒れている護衛兵の変わり果てた姿に、セシーリアの胸が痛いくらい脈打ちその身体は震えた。
アイリス・ラティアの別宅は、既に敵の手に落ちていたのだ。
「お母様!お母様!」
刃向かった為に殺された侍女達の中に、女王アイリスの姿は見えない。
床に倒れた者はピクリとも動かず、魂が宿っていないのが見てとれた。
そんな中、今にも途切れそうな声がした。
「セシーリア様……」
「っ!!」
倒れた家具の下からわずかに見えた白い手に、セシーリアが夢中で駆け寄る。
アイリス付きの女中長ミカであった。
「ミカ!しっかりするのよ。今助けるわ!」
言いながらセシーリアがミカの上の家具に手をかけると、彼女は僅かに首を振った。
「私はもうダメです。脇を刺されていて……もう長くありません」