ラティアの月光宝花
「後は任せたぞ、セシーリア!!レイゲン!!」

身体を痙攣させながらも力を振り絞るようにして、ロー・ラティアが同じく拘束されているレイゲン・ドゥレイヴの名を呼んだ。

「御意!!」

「そうはさせるか!」

カリムが素早くレイゲン・ドゥレイヴの顔を掴み、その口に指を突っ込んだ。

「二度もくらうかっ!吐き出せ!」

「父上!」

その行為にたまらずオリビエが叫んだ。

カリムが荒々しくレイゲンの口の中を指でかき回し、小さな種を取り出して踏み潰す。

「舐めた真似をしやがって!」

自死に失敗したレイゲンを、カリムが殴り飛ばした。

それから声を荒げたままセシーリアを睨む。

「見ろ!セシーリア王女!そなたの父は死んだぞ!!人質になった我が身がラティアの足枷になるのを防ごうとしてな!だがレイゲンは生き残った!!どうする、セシーリア王女!!このままラティアきっての軍師をみすみす見殺しにするのか?!」

お父様……!レイゲン……!

グッタリと力の抜けた父王と、カリムに殴られ地に伏したレイゲンを前に、セシーリアは呆然とした。

自分がどうすればいいのか分からず、まるで悪夢の中をさ迷っているようだ。

「オリビエ……」

舐めるような炎がこの惨劇を照らす中、セシーリアは堪らずオリビエを呼んだ。

一方オリビエは、セシーリアの震える身体に手を添え支えた。

オリビエもまた目の前の悲劇に為す術がなかったのである。
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