ラティアの月光宝花
「オリビエ、オリビエ」
悲しみに声を震わすセシーリアに、オリビエは柔らかく笑った。
「絶対……このラティアに戻る」
「早くしないか、オリビエ」
カリムが苛ついて声を荒げた。
「マルケルス。セシーリアを支えてやってくれ」
マルケルスが蒼白な顔でオリビエに頷く。
「オリビエ……!」
別れを惜しむには短すぎる時間だった。
セシーリアもマルケルスも当のオリビエも、突然訪れたこの現実に抗うことも出来ない。
「早くこっちへ来い」
カリムが威圧的に叫び、オリビエが再びセシーリアを見つめた。
「……オリビエ……!」
「セシーリア」
「嫌よ、オリビエ」
悪い夢なら早く覚めてほしい。
誰でもいいからこんなものはただの夢だと、身体を揺り動かし目覚めさせてほしい。
その時だった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、オリビエはセシーリアを抱き締めその唇に口付けた。
「愛してる、セシーリア。それから、強く生きろ」
オリビエ……!
歩き出したオリビエを見て、カリムは側近に頷いて見せた。
「レイゲン・ドゥレイヴを返してやれ!」
引きずるようにしてカリムの側近がレイゲンを中間距離まで運ぶと、そこで待っていたオリビエを拘束して引き返す。
「オリ……ビエ……!」
カリムが勝利感に満ちた笑い声を放つ。
その不快な声が地下通路に反響し、セシーリアは全身が裂けてしまいそうな思いがした。
力なく横たわるレイゲンの身体を、ヨルマが労るように鼻先で撫でると短く鳴いた。
「じゃあな、セシーリア王女。オリビエに会いたくばイシード帝国へ来られるがよい。俺の要求を飲むのも善し。あるいは……剣を携えて来るも善し」
ヨルマが牙を剥き出した。
「さらばだ!」
この悪夢が覚めることはなかった。
悲しみに声を震わすセシーリアに、オリビエは柔らかく笑った。
「絶対……このラティアに戻る」
「早くしないか、オリビエ」
カリムが苛ついて声を荒げた。
「マルケルス。セシーリアを支えてやってくれ」
マルケルスが蒼白な顔でオリビエに頷く。
「オリビエ……!」
別れを惜しむには短すぎる時間だった。
セシーリアもマルケルスも当のオリビエも、突然訪れたこの現実に抗うことも出来ない。
「早くこっちへ来い」
カリムが威圧的に叫び、オリビエが再びセシーリアを見つめた。
「……オリビエ……!」
「セシーリア」
「嫌よ、オリビエ」
悪い夢なら早く覚めてほしい。
誰でもいいからこんなものはただの夢だと、身体を揺り動かし目覚めさせてほしい。
その時だった。
一瞬、ほんの一瞬だけ、オリビエはセシーリアを抱き締めその唇に口付けた。
「愛してる、セシーリア。それから、強く生きろ」
オリビエ……!
歩き出したオリビエを見て、カリムは側近に頷いて見せた。
「レイゲン・ドゥレイヴを返してやれ!」
引きずるようにしてカリムの側近がレイゲンを中間距離まで運ぶと、そこで待っていたオリビエを拘束して引き返す。
「オリ……ビエ……!」
カリムが勝利感に満ちた笑い声を放つ。
その不快な声が地下通路に反響し、セシーリアは全身が裂けてしまいそうな思いがした。
力なく横たわるレイゲンの身体を、ヨルマが労るように鼻先で撫でると短く鳴いた。
「じゃあな、セシーリア王女。オリビエに会いたくばイシード帝国へ来られるがよい。俺の要求を飲むのも善し。あるいは……剣を携えて来るも善し」
ヨルマが牙を剥き出した。
「さらばだ!」
この悪夢が覚めることはなかった。