ラティアの月光宝花
セシーリアは涙にくれながら後ろを振り向き、守護神ディーアの像を力なく見つめた。

その時であった。

「セシーリア……。セシーリア・ラティア」

王達の棺を守る近衛兵は、神殿の外だ。

セシーリア以外誰もいない神殿内に、美しく澄んだ声が静かに響いた。

「セシーリア・ラティア」

二度目の呼び掛けと共に、神殿中が黄金色の光に包まれた。

こ、れは……。

恐怖心はないものの、セシーリアはあまりの事に息をするのも忘れた。

そんな中、やがてその光が天井付近でひとまとまりになったかと思うと、中央にそびえ立つ守護神ディーアの像へと一直線に吸い込まれた。

これは、一体……!

セシーリアが動けずにいる間に、更に信じられない状況が目の前に広がる。

なんと黄金色の光を吸い込んだディーアの石像が、みるみる人間へと変わったのである。

いや、人間ではない。

石のマントは柔らかい絹に変わり、その肌はたちまち真珠のように艶めいた。

今まさに守護神ディーアは天界から舞い降り、その姿を現したのだった。

「セシーリア・ラティア」

「は、い……」

弓を引いていた手を下ろし、台座から床に降り立った守護神ディーアが、たっぷりとしたマントを揺らしてセシーリアの真正面まで歩を進める。

「セシーリア・ラティア。私が分かるか?」
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