ラティアの月光宝花
「ダメ!ダメよ、シーグル!そんな事をしたら今度こそこのラティアがなくなってしまうわ。オリビエだって殺されてしまう。私達、カリムを怒らせてしまったの。カリムはその腹いせにオリビエを」

「ああ、見てたよ。イカサマ皇帝の卑怯な試合をな」

セシーリアの脳裏に、カリムのスティーダを射った人物が蘇った。

……もしかして、あれは……。

「シーグル。毒針を刺されたオリビエを救ったのは……あなただったの?」

シーグルが頷いた。

「ああ、俺だ」

それから苦しそうに眉を寄せると、祭壇の前に置かれた三つの棺に眼を向けた。

「俺のせいだ」

「そうだな。お前のせいでもあるが、お前だけのせいでもない」

「マルケルス!」

神殿にマルケルスの声が響き、セシーリアとシーグルは弾かれたように振り返った。

「切っ掛けはどうであれこれは起こるべくして起こったんだ。最初からカリムは仕掛けるつもりだった。卑怯な簒奪者の考えそうな事だ。よりによって王女の誕生祭に奇襲をかけるとはな」

マルケルスが奥の祭壇まで歩を進め、シーグルの脇に立つと、並べられた棺を見下ろした。

「マルケルス」

「シーグル、元気そうだな」

その時だった。

「俺もいるぜ?」

振り向いた三人の瞳に、アンリオンの姿が映る。
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