ラティアの月光宝花
けれど。

「シーグル。その態度はなんなの?あなた凄く変わったわ」

城内にいた頃のシーグルは品よく、無邪気で純粋だった。

それが今はどうだろう。

三年ぶりのシーグルときたら、野性的で粗野で、どこか皮肉気なのだ。

「はあ?!」

眉を寄せて口を開けるとバカにしたようにこう言ったシーグルに、セシーリアは呆気にとられた。

そんなセシーリアにシーグルは更に口を開く。

「生ぬるい暮らしを捨てて、三年もたった独りで生きてきたんだ。そりゃ変わりもするさ。しかも俺がいたのは《エルフの風》だぜ?変わらなきゃ今頃はあの世で暮らしてるだろうよ」

エルフの風とはラティア城下にあるグロディーゼ養成所である。

「エルフの風にいたことは知ってるわ。だって私、あなたに会いに行ったもの」

顔だけを真横に向けてこちらを見つめたセシーリアに、シーグルは息を飲んだ。

俺だって……知ってる。

……知ってるに決まってるだろ。アルディン相手にあんなに派手な事をしたんだから。

それに今セシーリアにピタリとついているこの大豹……ヨルマを猟師から買い取ってエルフの風に連れてきたのはこの俺だ。

「……へえー。そりゃ知らなかったな。俺は長く興業に出てたから」

シーグルがこう言うや否や、ヨルマが頭を振りながら両の牙を見せて不満げに鳴いた。
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