ラティアの月光宝花
……いつの間にオリビエはこんなに男らしい身体になっていたのだろう。

セシーリアの記憶の中のオリビエはヒョロリと細く、ただ長身で手足が長かった。

「……くっ!!」

その時、一際大きな音が響き、オリビエの手からスティーダが弾け飛んだ。

「そこまでっ!!」

しかし、アンリオンの声が終了を告げても、必死になっているアデルにはまるでその声が届かず、攻撃は止まらなかった。

セシーリアは心臓に冷水をかけられたようにビクンと身体が震え、それを感じた馬が首を上げて蹄を鳴らす。

そんなセシーリアの前でオリビエは、制止のきかないアデルのスティーダを後方に倒立しながら回転し、跳び退いて避けた。

たちまちそんなオリビエの身の軽さに歓声が上がる。

「アデル殿、そこまでです!あなたの勝ちだ」
 
「すまない……!」

アンリオンとマルケルスが声を張って同じような言葉をかけ、ようやくアデルが我に返った。

「いえ。アデル殿、お疲れのところを感謝申し上げます」

オリビエが、地についた手を払いながらアデルを見つめ、深々と頭を下げながら再び口を開いた。

「参りました、アデル殿。僕はまだまだあなたに敵わない。もっと精進しますゆえ、またいつかお手合わせ願います」

いつの間にか瞳の中の鋭い光は消え失せ、変わりに穏やかな微笑みを浮かべたオリビエに、アデルは苦笑して白い歯を見せた。

「久々に熱くなってしまったよ。オリビエ、こちらこそよろしく」
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