ラティアの月光宝花
マルケルスの愛鳥であるハヤブサのマーカサイオンは立派な羽を大きく広げてひと鳴きすると、太い二本の脚で腕木を蹴るようにして舞い上がった。

「やったな、セシーリア!」

「うん、凄いわ!マルケルスはさすがね!」

シーグルとセシーリアは、宮殿内で互いの顔を見合わせて頷いた。

シーグルとの約束通り、セシーリアはサージアにもルアスにも出陣せずこのラティアに残り、伝令係を通じて同時討ちの状況を見守っていた。

九万の軍隊を二つに分け、サージアとルアスに向けて出陣させたものの、サージアの戦場に出た兵の数は四万五千のうち、僅か二万である。

その二万の兵を更に八つに分けて囲みながら奇襲をかけ、夜通し投石器で建物を破壊し続ける作戦は、油断していたサージア帝国を混乱させた。

それに追い討ちをかけるかのように、応戦してきたサージア兵をマルケルスの考案した武器が壊滅状態に追い込み、敵軍全体の士気を著しく下げたのだった。

シーグルは再び書面に視線を落とすと唇を引き上げ、ニヤリと笑った。

「マルケルスが設計したあのパージェとかいうデカイ武器、たった二人が操作して連続で射れるんだぜ。しかも射程距離は一ハロンだと」
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