ラティアの月光宝花
「この決定は当然だ。王子二人の命を助けるだけ有り難く思ってもらいたいところだ。恩を仇で返したのはサージアだからな」
「……うん……」
シーグルの体温を感じ、次第にセシーリアの震えが治まってくる。
「これは俺の予想だが、サージアは恐らくイシードと安全保証条約を結んだんだろうよ。奇襲をかけるためだけにサージアを利用したイシードに守る気なんか更々なかっただろうがな」
その可能性は大いにあった。
乾いた大地しかないサージアなど、不経済でしかないからだ。
「目先の安全に惑わされやがって」
「だからって……ラティアを裏切るなんて」
イシード帝国皇帝カリムの顔が、セシーリアとシーグルの脳裏に蘇った。
これもカリムの力なのだ。
革命を起こし、イシード帝国の皇帝にのしあがったカリムの力。
その力に無知なサージアは眼がくらみ早まってしまった。
「大国から庇護を受けることが最大の力じゃない。自国を守る力とは他国に頼るのではなく、自らが生み出さねばならないんだ。それをサージアは怠った」
セシーリアは身を起こすとシーグルを見上げてフワリと笑った。
「サージアなど敵じゃないわ。ラティアの敵はイシードよ」
「ああ。そうだな」
シーグルもまた、榛の瞳に柔らかい光を浮かべて微笑む。
「手は緩めないわ。引き続きルアスには容赦のない報復を」
……何はともあれこれで一歩イシード帝国に近付いた。
伝令係にマルケルスへの返事を伝えた後、セシーリアは口を引き結んで空を見据えた。
「……うん……」
シーグルの体温を感じ、次第にセシーリアの震えが治まってくる。
「これは俺の予想だが、サージアは恐らくイシードと安全保証条約を結んだんだろうよ。奇襲をかけるためだけにサージアを利用したイシードに守る気なんか更々なかっただろうがな」
その可能性は大いにあった。
乾いた大地しかないサージアなど、不経済でしかないからだ。
「目先の安全に惑わされやがって」
「だからって……ラティアを裏切るなんて」
イシード帝国皇帝カリムの顔が、セシーリアとシーグルの脳裏に蘇った。
これもカリムの力なのだ。
革命を起こし、イシード帝国の皇帝にのしあがったカリムの力。
その力に無知なサージアは眼がくらみ早まってしまった。
「大国から庇護を受けることが最大の力じゃない。自国を守る力とは他国に頼るのではなく、自らが生み出さねばならないんだ。それをサージアは怠った」
セシーリアは身を起こすとシーグルを見上げてフワリと笑った。
「サージアなど敵じゃないわ。ラティアの敵はイシードよ」
「ああ。そうだな」
シーグルもまた、榛の瞳に柔らかい光を浮かべて微笑む。
「手は緩めないわ。引き続きルアスには容赦のない報復を」
……何はともあれこれで一歩イシード帝国に近付いた。
伝令係にマルケルスへの返事を伝えた後、セシーリアは口を引き結んで空を見据えた。