ラティアの月光宝花
マルケルスはハッとしてセシーリアを見つめる。

それから苦笑して口を開いた。

「単純すぎて見過ごすとこだったぜ。ルアス帝国は……一枚岩じゃないのかも知れない」

その可能性は大いにあった。

皇帝ラバトの母親は第二夫人だが、弟の母は長く子宝に恵まれなかったものの第一夫人である。

本来、王位継承に一番近い位置にいるのは第一夫人の子供であり、弟の方なのだ。

「皇帝ラバトの腹違いの弟が……王位継承に関して不満があるとしたら……」

セシーリアがゆっくりと頷く。

「弟は軍を出してないかもしれないわ」

マルケルスがニヤリと笑った。

「俺達の読みが正しければ……王弟は兄ラバトの失脚を狙ってる」

セシーリアもまた微笑みを浮かべてそれに付け加えた。

「王弟はラバトが皇帝の座についたのも不満だし、後にその息子……第一王子が後を継ぐのも許せないはず。なぜなら第一王子はまだ未成年だし、自分の方が王に相応しいと思っているのだとしたら」

決めてかかるのは危ない。

軍の少なさが、ルアス帝国の作戦である可能性も捨てるわけにはいかない。

「俺はイエルド殿と共に、このままルアスの弟に接触する。もしも交渉に失敗した場合を考えてアンリオンにも伝令を出し、帰還兵の一部をルアスに回してもらう」

「分かった」
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